勤務先や家族に秘密にできるか

Q.自分に借金があることを、家族に言っていません。家族や勤務先に秘密にしたまま、任意整理や破産などの手続きを取ることは可能ですか?

 

A.弁護士においては、可能な限り知られないように配慮致します。但し、ご家族の協力が必要な場面もあります。


(1)貸金業者からの支払督促について

 ご依頼を受け、弁護士が代理人になると、貸金業者からの接触の一切は弁護士あてになされます。よって、ご自宅や会社に債権者から督促等の連絡が来るということはありませんのでご安心ください。

(2)弁護士とのやり取りについて

 ご自宅への電話連絡を避けたり、郵便物を送付しないよう、可能な限り配慮致します。

 ただし、ご本人と連絡が取れなくなってしまった場合には、代理人として責任ある任務の遂行ができませんので、やむを得ず辞任させていただくことがございます。弁護士が代理人を辞任すると、債権者からの接触が再開しますので、ご家族や勤務先に知られてしまう可能性が出てきます。

(3)裁判所における手続きについて

▼裁判所を介した手続きをとる場合(破産、個人再生など)

 裁判所へ破産や個人再生の手続きを申し立てるにあたって、ご本人だけでなく、同居するご家族の生活状況や資産状況についても裁判所へ疎明資料を提出し、報告しなければなりません。

 疎明資料の入手にあたっては、ご家族の協力が必要なものも少なくありませんので、その段階でやむなく知られてしまう可能性があります。

 

 資料として、例えば……

(自分以外の家族についての)

  ・所得証明書

   → ※ 役場で入手します。入手の際は本人でなければ委任状が必要な場合があります。

  ・無資産証明書

   → ※ 同上

  ・自宅の賃貸借契約書

   → ※ 自分以外の家族が契約者(賃借人)の場合でも必要となります。

  ・通帳(場合によります。)

 

 また、将来退職金が出る場合には、退職金の受給額についての資料を提出しなければなりませんので、資料入手の際に勤務先の協力が必要となる可能性もあります。

 

▼任意整理の場合

 任意整理は裁判所を介す手続きではありませんので、上記のような資料等の提出はありません(但し、交渉において債権者から任意での提出を要請されることはあります。)。任意整理の場合は、上記(2)だけ注意すれば、家族や勤務先に知られる可能性は低いと言えるでしょう。

 

▼家族や親族、会社からお金を借りている場合

 家族や親族、勤務先等が債権者である場合、破産や個人再生の手続きをすると、必ず裁判所から債権者へ通知が送られますので、その人(勤務先)に事実を隠すことはできません。

 なお、それを避けるために、家族や親族、会社からの借金があることを隠し、他の借金だけを対象に破産や個人再生の手続きを取ることは、「偏頗(へんぱ)弁済」(*)にあたるためできません。

 

*偏頗弁済/一部の債権者のみを優遇するような返済をすること。債権者平等の原則に反するため、法律で禁止されています。