免責不許可事由があっても諦めずに検討を!「裁量免責」で考慮されるポイント【自己破産】

1 はじめに

 今回の動画では、自己破産における「裁量免責」についてお話したいと思います。

 万が一、破産者にギャンブル・浪費などの免責不許可事由が存在する場合でも、破産に至るまでの事情や、破産後の対応状況などをふまえ、免責を認める余地を残しておくのが、裁量免責です。

 今回は、裁量免責について、その法律上の仕組みや、どのようなポイントが評価されるかについて、それぞれお伝えしたいと思います。

 

  ◆免責許可とは/免責判断における2つの“ふるい” →2.

  ◆裁量免責を判断する際に考慮されるポイント   →3.

  ◆破産を諦める前に、あるいは申し立てる前に、弁護士に相談を →4.

 

2 免責許可とは/免責判断における2つの“ふるい”

 自己破産における免責許可とは、簡単に説明すると、裁判所が債務者の支払義務を免除するという制度です。

 そして破産法は、破産者が経済的に更生する余地を残すために、免責するかどうかを判断する際に、破産者を以下の2つの“ふるい”に掛けていることについては、以前の動画や記事でご説明したとおりです。

  ① 免責不許可事由に該当しない限り、免責が許される。

  ② 仮に免責不許可事由に該当する場合でも、一切の事情を考慮して免責を許可することが相当と言える場合は、免責が許される(裁量免責)。

 

 そのときの動画・記事は、主に①のふるい(免責不許可事由)に関するお話でしたが、今回は②のふるい:裁量免責についてご説明したいと思います。

 

3 裁量免責を判断する際に考慮されるポイント

⑴ 破産に至った経緯

 破産者の属性(職業、収入状況、年齢、家族構成など)や、債務を負った事情などが考慮されます。

 たとえば、破産者の浪費やギャンブルがあったとしても、

  ・突然体調を崩して医療費がかかる上に減収に至った

  ・雇用先がコロナ禍のあおりを受け、突然退職を迫られた

  ・扶養家族が多く、子どもの進学準備のために借入れをしなければならなかった

 

といった事情から債務がふくらんだような場合は、裁量免責を相当とする方向の事情として考慮されることになります。

⑵ 免責不許可事由の性質・重大性・帰責性

 該当するとされる免責不許可事由について、その性質や重大性、破産者の帰責性(行為態様・程度・悪質度)なども考慮されます。

 具体的には、浪費やギャンブルなどであれば、そこに宛てて費消した金額の多寡や、これらの行為を継続していた期間・時期などが総合的に考慮されます。

 また、破産管財人に対する説明義務違反(聞かれたことに対し、虚偽の説明をする等)も免責不許可事由に該当するのですが、この場合は違反の内容・程度、違反が破産手続に与えた影響などが総合的に考慮されます。たとえば、裁判所が注意しても破産管財人からも面談要請を拒否し続けたり、重大な虚偽説明を行ったりし、これによって破産手続の進行を長期にわたって遅らせるような場合、裁量免責を不相当とする方向の事情としてはたらきやすくなってしまいます。

 

⑶ 破産手続開始決定後の経過

 破産開始決定後の経過として、

  ① 破産者の態度

  ② 債権者からの意見の有無やその内容

なども考慮されます。

 

  ① 破産者の態度について

   具体的には以下の事情がポイントとなります。

    ・破産管財人の調査等に対する破産者の誠実性や協力の程度

    ・免責不許可事由に対する破産者の反省の有無・程度

    ・経済的再生に向けた破産者の努力や意欲

   実務上、これらは重要な要素のひとつとして観察されています。

   破産者によっては、破産管財人から家計収支表や反省文の提出を求められたり、家計指導などを受ける場合もあるかと思います。これらはいずれも、破産者に有利な事情(つまり裁量免責を相当とする方向にはたらきやすくする事情)として斟酌したいがために要請するものです。そのため免責不許可事由を抱える破産者の方も、このような要請には是非積極的に対応していただくとよいかと思います。

 

  ② 債権者からの意見について

    破産者の免責によって直接不利益を受ける債権者は、破産手続の中で免責に関する意見を述べる機会が与えられます。その中で、債権者から意見が実際に提出されるかどうか、そしてその数や内容なども、考慮されるポイントとなります。

    具体的には、意見を出した債権者の数や、それぞれの属性、破産者との関係、与信に至った経緯、債権者の債権管理状況のほか、特に破産者の詐術に起因する場合は、被害感情の程度、破産者による被害回復の有無・程度なども考慮されます。

 

4 破産を諦める前に、あるいは申し立てる前に、弁護士に相談を

 以上のとおり、裁量免責について、その法律上の仕組みや、どのようなポイントが評価されるかといった点からお伝えしてきました。

 たとえば、「自分は浪費やギャンブルを続けてきた」、「免責不許可事由に該当してしまうかもしれない」というような方でも、破産を諦める前に、是非1度弁護士に相談されてください。(逆に、裁量免責という仕組みがあるから大丈夫と早合点してしまうことも要注意です。申立てをする前にも、弁護士に相談されてください。)

 そもそも免責不許可事由に該当しそうかどうかを見立てた上で、仮に該当しそうな場合でも、その問題点を共有しながら、裁量免責を目指すためのアドバイスや対応ができるかと思います。

 

 繰り返しになりますが、破産法は、自己破産を望む方が経済的に更生・再生していくために力を貸してくれる制度でもあります。どうか諦めずに相談されてください。

 

破産法
第一条(目的)  
この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。

今回もご覧いただきありがとうございました。

昭和62年4月13日生
鹿児島県鹿児島市出身
福岡県弁護士会所属

経歴
兵庫県立神戸高等学校卒
九州大学法学部卒
九州大学法科大学院修了
趣味
音楽鑑賞・演奏,映画鑑賞,旅行,読書,囲碁