自己破産という選択

銀行やカード会社、消費者金融などからの借金が増えて、自分の収入ではどうしようもない、そういう状態になったら、どうしたらいいでしょうか?あるいは、ご自分の親族から、「お金を貸してくれ」と言われて、事情を聞いたら、借金でどうにもならない、そういう状態だったら、どのようにアドバイスしてあげたらよいでしょうか。

 

そうした場合には、「自己破産」という方法があります。

 

破産とは、簡単にいえば、持っている財産をはき出して、お金に換えて、これを債権者に分配する、それで足りない分は、免責にする、という制度です。

 

このように、破産は、①持っている財産をお金に換える、②これを債権者に分配する、という制度ですが、ここで、「持っている財産」というのは、原則として、土地や建物、株などの有価証券等、今売却したら数十万円以上になる、というような財産をいい、普通の家にあるような家財道具などが取り上げられることはありません。ですから、なにも取られないで、借金だけなくなる、というケースも多いのです。

 

破産をした場合、どんなデメリット、マイナスがあるかというと、実は法的にはほとんどありません。

●法律上は、一定期間資格制限があり、資格のある一定の職業(たとえば、弁護士など)にはつけないということもありますが、会社員、公務員も含めて、一般的な仕事の場合にはほとんど関係ありません。

●また、金融機関の信用情報上不利益な記録がされて借り入れができなくなる(いわゆる「ブラックリストに載る」)ということもありますが、これは、そもそも、”破産をしたから借りられない”というわけではなく、”借り入れが大きくなった”、”返済が滞った”ということが不利益な記録となって借り入れができなくなるわけですから、特にこれもデメリットとはいえないと思います。なお、この信用情報上の記録は、一定期間(約5年~7年など)で消えるといわれています。

●また、戸籍に載るなどということももちろん、ありません。

 

このような、破産制度は、負債が大きくなってしまった場合の最後の手段として、債務者にとって非常に都合のよい制度ですが、どんな場合でも100%使える、というわけではありません。

過去7年の間に破産したことのある場合には原則として認められません。

負債の原因が、ギャンブルや浪費の場合には認められないこともありますし、また、故意による不法行為、たとえば、人を殴って怪我をさせた場合の損害賠償債務などは免責されません。

 

逆に言えば、このような場合でないかぎり、返済不能になった場合には、破産は積極的に検討されるべき制度であると考えます。

よく、破産というと非常にネガティブな印象を持たれて、なにもかも終わりのように考える方がおられますが、それは間違っていると思います。

つまり、「借りたものは返す」これは法律に定められていることですが、「借りたものを返さなくてよい」という破産の制度もまた、法律(破産法)に規定のある制度です。

 

なぜ、このような制度があるか。

 

それは、借金が大きくなすぎて、毎月の返済がかさんでくると、人は返済のことばかり考えるようになり、それ以外のことが考えられなくなる、いわば”借金の奴隷”になってしまいます。実際問題としても、負債が返済能力を超えてしまうと、結局は”借りて返す”ということになってしまい、ますます負債が膨らんでしまう。

そのような状況になるよりは、債権者には迷惑をかけるけれども、今ある借金は一旦無しにして、そのかわり、また明日から毎日一生懸命働いて、税金や社会保険を納める、あるいは、一生懸命子育てして世の中の役に立つ。そちらのほうが、長い目でみると日本全体にとってプラスになる。

破産という制度は、そういう観点から認められた制度であると思います。

 

ですので、借金が大きくなりすぎて、自分の力では返せなくなってしまったときには破産することを考えてみるべきです。また、お友達やご親族がそのような状況になってしまった場合に、お金を貸してあげるのも一時的な助けにはなるのかもしれませんが、破産を考えるように勧める、というのもアドバイスの一つではないかと思います。