個人再生が有効な場合(手続き開始の要件)

私は、住宅ローンや消費者金融などからの借入れが増えてしまい、返済が苦しくなってきました。収入は、多いとは言えませんが、安定していると思います。「個人再生」を利用することはできるのでしょうか?

 

 個人再生を利用するには、借金などの総額(住宅ローンを除く)が5000万円以下であること、将来にわたり継続的に収入を得る見込みがあることなどが要件となっています。

 3年以内に債務が返済できるような再生計画を立てることができれば、「個人再生」を利用することは十分に考えられます。

 再生計画を立てるには、将来にわたる財政状態を予測し、確実に実行できるものにしなければならず、債権者の協力も必要となってきます。

 こうしたことから、個人再生を利用するには、法律の専門家である弁護士にご相談いただくことを強くお勧めします。個人再生の申立て前の準備から手続き終了まで、全力でお手伝いして参りますので、お気軽にご相談ください。

1 個人再生の種類

個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」があり、それぞれ手続きや申立ての要件が異なります。

(1)小規模個人再生

主に個人で小規模な事業を営んでいる人などを対象とした手続で、再生計画の決定には債権者の決議が必要です。

(2)給与所得者等再生

主にサラリーマンなどを対象とした手続で、再生計画の決定は、債権者の意見を聴いて、裁判所が行います。

2 小規模個人再生の開始要件

(1)債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあること

個人再生は、通常の民事再生手続を個人向けに簡易・迅速に利用できるようにしたものです。このことから、民事再生手続の開始の要件である「債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがある」という要件が必要です。

 

「破産手続開始の原因となる事実」とは、支払能力を欠くために弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいいます。個人再生は、こうした”おそれ”があれば、借金の返済が全くできないわけではなくても、利用することができます。

(2)将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあること

再生計画は、原則として、3か月に1回以上の支払いを3年間継続する方法になりますので、このような要件が必要とされています。このことから、時として収入が途切れることがあっても、3か月に1回以上の支払いができれば、この要件をみたすと解されています。

(3)借金などの債権総額(住宅ローンなどを除く)が5000万円以下であること

債権者に負担をかけすぎないよう、負債総額が5000万円以下とされています。ただし、住宅ローンなどは、個人再生手続においても支払いを免除されることがないので、債権総額から除かれます。たとえば、住宅ローンを含めた債務総額が5500万円であっても、住宅ローンを除いた債務が4500万円である場合には、この要件はみたします。

3 給与所得者等再生の開始要件

給与所得者等再生の場合は、先ほどの小規模個人再生の開始要件に加えて、次の要件も必要となります。

(4)給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれること

これは、給与所得者等再生のみの要件です。給与所得者等再生には債権者の決議が不要で、小規模個人再生の手続きよりも簡単となっているので、確実に弁済が期待できることが必要なためです。

(5)免責等を得た日から7年以内でないこと

過去に、給与所得者等再生の再生計画認可決定、ハードシップ免責、破産免責等を受けている場合には、それらの確定の日から7年間は給与所得者等再生を開始できません。

4 「小規模個人再生」か「給与所得者等再生」かの選択

個人再生の手続開始の要件としては、「給与所得者等再生」の方が「小規模個人再生」よりも少しだけ厳しいといえます。

しかし、個人再生の手続きが開始した後で行われる再生計画の認可は、給与所得者等再生の方が厳しい基準となっています。そして、サラリーマンなどが小規模個人再生を選択することはできます。

これらのことから、サラリーマンなどであっても、まずは小規模個人再生を選択し、債権者の反対が見込まれる場合に給与所得者等再生を検討することになります。

 

「小規模個人再生」か「給与所得者等再生」かの選択をするには、債務者の将来にわたる財政状態や債権者の状況を総合的に判断する必要があるといえます。当事務所は、ご依頼者の財務状態を詳しくお伺いし、適切な手続きを選択するとともに、経済的な再生をお手伝いして参りますので、お気軽にご相談ください。