ハードシップ免責

私は、「個人再生」を利用して借金の返済を2年半ほど継続しており、もうすぐ計画通りの弁済が終了しそうでした。しかし、勤め先が不況で倒産してしまい、再生計画どおりに返済することができなくなってしまいました。再生計画どおりの返済を止めることはできるのでしょうか?


「個人再生」では、債権(借金など)を減額して返済する「再生計画」を裁判所が認可すると、債務者は再生計画どおりに弁済をしなければならないのが原則です。しかし、「再生計画の変更」によっても再生計画の遂行が困難な場合には、3/4以上の弁済を終えているなど一定の条件のもとに、残りの債務の責任を免除する「ハードシップ免責」が認められます。

やむを得ない事情により再生計画どおりの弁済が困難になった場合、当事務所においてお手伝いできることもありますので、お気軽にご相談ください。


1 「ハードシップ免責」とは

「ハードシップ免責」とは、再生計画の履行段階において、債務者の責めに帰することができない事由により残りの再生計画の遂行が極めて困難となった場合に、残りの債務の責任を免除することをいいます。

「個人再生」では、債務者は、再生計画を遂行しなければなりません。しかし、再生計画認可決定があった後、やむを得ない事情によって再生計画の遂行が困難になる場合に「再生計画の取消し」となると、借金の全額の支払いをしなければならなくなります。

こうしたことを避けるため、「再生計画の変更」が認められますが、「ハードシップ免責」は、「再生計画の変更」によっても対処できないような場合に用いられます。

2 「ハードシップ免責」の要件

「再生債務者がその責めに帰することができない事由により再生計画を遂行することが極めて困難」となり、かつ、次のいずれにも該当する場合です。

「責めに帰することができない事由」とは、債務者のコントロールが及ばないような事情をいいます。

「極めて困難」とは、「再生計画の変更」の要件である「著しく困難」よりも更に深刻な場合をいいます。


(1)再生計画で変更された債権額の3/4以上の額の弁済を終えていること

例えば、3か月に1回の弁済を3年間で行うとしていた場合、合計12回の支払いのうち9回は支払っていなければなりません。

(2)免責の決定をすることが再生債権者の一般の利益に反するものでないこと

これは、債務者が弁済した総額が、再生計画認可時において債務者が「自己破産」をすれば得られた配当額を超えている必要があることをいいます。

「個人再生」は長期にわたり弁済が予定されるものですから、これより短期間で行われる「自己破産」の配当よりも得られる金額が少なければ、債権者の利益を不当に害することになるからです。

(3)再生計画の変更をすることが極めて困難であること

「再生計画の変更」によっても再生計画の遂行が困難な場合をいいます。

3 「ハードシップ免責」の手続き

債務者が、「ハードシップ免責」を求める申立書を裁判所に提出します。申立てができる人は、債務者に限られます。

裁判所は、債権者の意見を聴いた上で、「ハードシップ免責」の決定をします。

「ハードシップ免責」の決定が確定すると、債務者は、履行した部分を除いて、債務の全部の支払義務を免除されます。

ただし、再生計画の認可決定の日から7年間は、「自己破産」による免責などを受けることができなくなります。

状況の変化により再生計画どおりの弁済が困難になった場合、当事務所においてお手伝いできることもありますので、お気軽にご相談ください。