再生計画と債権者の利益

Q. 住宅ローンや消費者金融の返済が滞ってきました。せめて保証人が付いている借入先だけでもと思い、生命保険を解約して支払いました。個人再生の再生計画では、こうした支払いはどのように扱われるのでしょうか?

 

A. 個人再生では、債務者が債務を返済していく計画(再生計画)を作成しなければなりません。再生計画が認められない要件として、「債権者の一般の利益に反するとき」があります。この「債権者の一般の利益に反するとき」とは、再生計画に基づく弁済額が自己破産を選択した場合の配当を下回る場合をいいます。

自己破産を選択した場合、がんばっても返済ができない状態(支払不能)になった後、住宅ローンの契約先の銀行がそのことを知って支払いを受けると、その支払いが取り消されることがあります。このことから、個人再生を選択した場合、こうした支払いを再生計画の「弁済総額」に上乗せする必要があります。仮に、上乗せをしなければ、破産をした場合の配当を下回ることになりますから、再生計画が認められず、個人再生自体も認められなくなります。

支払いが苦しくなってから特定の債権者だけに弁済をすると、個人再生の場合も自己破産の場合も、他の債権者との関係で問題とされることになります。

このような問題は、早めに弁護士に相談して債務整理をすれば防ぐことができます。借金などの支払いが苦しくなってきたら、早めに弁護士にご相談ください。

 

1.再生計画が認められない場合

 個人再生で債務者が債務を返済していく計画を「再生計画」といいます。

 再生計画を裁判所が認めない要件として、「債権者の一般の利益に反するとき」があります。

 個人再生は、再生計画により原則として3年間という長期にわたり弁済が予定されるものですから、これより短期間で行われる自己破産の配当よりも得られる金額が少なければ、債権者の利益を不当に害することになります。

 このことから「債権者の一般の利益に反するとき」とは、再生計画による弁済額が、清算価値(破産をした場合の配当)を下回ってしまう場合のことをいいます。

 

2.再生計画に記載する弁済総額

 再生計画には、債権者に対する「弁済総額」を記載しなければなりません。この弁済総額が自己破産を選択した場合の配当を下回ると、再生計画が認められず、個人再生自体も認められなくなります。

 このことから、再生計画を作成する場合、自己破産をした場合との比較が必要となってきます。

 自己破産を選択した場合、がんばっても返済ができない状態(支払不能)になった後、債権者がそのことを知って返済を受けていた場合、債権者を平等に扱うため、その返済が取り消されることがあります。

 例えば、がんばっても返済ができない状態(支払不能)になった後、生命保険を解約して保証人付きの債権者だけに支払いをした場合、自己破産では返済が取り消されることがあります。

 個人再生では、会社なども利用できる民事再生手続を個人向けに簡易・迅速に利用できるようにしたものですから、こうした返済の取消しは行われません。しかし、特定の債権者だけに対する返済は、財産を流出させたことになりますから、再生計画の弁済総額にはこうした支払いを上乗せする必要があります。仮に、上乗せをしなければ、自己破産をした場合の配当を下回ることになり、再生計画が認められないことになります。

 

3.支払いが苦しくなってきたときの弁済

 がんばっても返済ができない状態(支払不能)になると、特定の債権者だけに支払ってしまいがちな状況になることがあります。しかし、支払不能の状態で、債権者の求めに応じて特定の債権者に弁済をしてしまうと、他の債権者が不利益となりますので、個人再生の場合も自己破産の場合も、他の債権者との関係で問題とされることになります。

 

 こうしたことは、早めにご相談いただくことで防ぐことができますので、お気軽に当事務所にご相談ください。

 

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