自己破産(個人破産)を検討する際の留意点

1 はじめに

 今回の動画では、「自己破産を検討する際の留意点」について、お話したいと思います。

 「破産」という言葉のマイナスイメージ自体が一人歩きしてしまいがちですが、破産を選択した場合、具体的にどのようなデメリットがあり得るのか、解説いたします。

 逆に言えば、今から述べるデメリットをクリアできるなら、自己破産を積極的に選択できるケースだろうということになりますので、是非ご参照ください。

 

2 自己破産を検討する際の留意点(4つ)

⑴ 資格・職業について制限がかかります(ただし、復権すると制限が消滅します)

 法律では、破産手続開始にともない、破産者の資格や権利についての制限を設けている場合があります。

 たとえば、以下のとおりです。

 

弁護士、公証人、司法書士、税理士、公認会計士、社会保険労務士、不動産鑑定士、

警備業者、警備員、通関士

生命保険募集人、損害保険代理店、

宅地建物取引業者、宅地建物取引士

建設業、貸金業者、旅行業

銀行の取締役・執行役・監査役

 

後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、遺言執行者

 

 他にもありますが、自分の資格は大丈夫かな。。と気になる場合は、弁護士に相談される際に合わせて確認しておくとよいかと思います。

 

 以上のような資格をお持ちの方、職業に就いている方は、破産手続の開始に伴い、その資格・職業を前提とした仕事ができなくなりますので、破産手続以外の手続(個人再生・任意整理など)を検討するか、破産手続中はその資格・職務以外の業務に従事する等の調整が必要となります。

 なお、このような資格制限は、永続するものではなく、「復権」により消滅します。復権するタイミングとして最も多いのは、免責許可決定が確定したときです。

 

 法律がなぜこのような資格制限を設けているかというと、これらの資格・職業については、以下のような性質をもっていることから、破産手続中はその職務をストップさせることで、債権者や取引先等に無用な損害・混乱を及ぼさないようにするためです。

・最低基準以上の資力がなければ、そもそも存立が危ういような資格・職業であること

・破産すると、公正な職務遂行に懸念が抱かれるような資格・職業であること

・他人の権利や財産の管理・処分に関与する資格・職業であること

 

 以上のほか、株式会社の取締役は、破産手続開始決定を受けると、会社法の規定により会社と取締役との委任関係が終了する結果、当然に取締役の地位が失われることになります。

 ただし、会社取締役については、破産手続開始決定を受けたことが取締役の欠格事由ではないので、株主総会で再度選任手続を取れば、引き続き取締役として業務を行うことができます。

 

⑵ 破産したことが信用情報機関へ登録されます

 破産者が破産手続開始決定を受けると、金融機関等が加盟する信用情報機関(KSC、JICC、CIC等)に、破産に関する情報(事故情報。いわゆるブラックリスト)が登録されることになります。

 そして、事故情報が登録されている間は、金融機関等からの借入れや、クレジットカードの作成・利用が事実上不可能となります。

 登録される期間は、明確に公開されているわけではありませんし、情報機関によっても異なるのですが、おおよそ免責許可決定後5~10年程度といわれています。

 

⑶(連帯)保証人が、債権者から請求を受けます

 自己破産をすると、債権者から(連帯)保証人に対し、債務残額を一括で払ってくださいという請求がいくことになります。個人再生手続を選択した場合も同様です。

 対策としては、債務者サイドで任意整理を検討するか(任意整理の場合は、整理された債務を約束通り弁済する限り、保証人に請求がいきません。)、保証人サイドで債権者と協議し、一括は難しくても分割返済を交渉するか、ということになるかと思います。

 

⑷ 不動産・自動車・保険など、資産を手放さなければならない場合があります

 破産手続は、自分の財産をお金に換えて、債権者に分配し、その上で免責を受ける、というのが基本的な流れです。

 そのため、一定以上の資産(不動産、一定価値以上の自動車、100万円以上の現金、20万円より高額の預貯金、20万円より高額の解約返戻金が見込まれる保険など)は、破産手続の中で手放さなければなりません。

 なお、保険については、契約を継続できる可能性もあります(自由財産拡張)。

 

3 おわりに

 以上、今回の動画では、「自己破産を検討する際の留意点」を4つご紹介しました。

 冒頭でも述べた通り、「破産」という言葉のマイナスイメージ自体が一人歩きしてしまいがちですが、実際に気をつけなければならないことは、以上の4点に尽きるかなと思います。

 本来の破産制度は、破産者が経済的に再生するための機会を確保しようというものですから、今回の4つのデメリットをクリアできるケースであれば、自己破産を積極的に検討されてよいものと思います。

 

 当事務所では、依頼者の方1人1人の状況に合わせて方針を検討しておりますので、どうぞご相談いただければと思います。

 

著者紹介

昭和62年4月13日生
鹿児島県鹿児島市出身
福岡県弁護士会所属

経歴
兵庫県立神戸高等学校卒
九州大学法学部卒
九州大学法科大学院修了
趣味
音楽鑑賞・演奏,映画鑑賞,旅行,読書,囲碁