親が自分の名前で預金口座を作ってくれていた・・! 自己破産への影響と対処法

1 はじめに

 今回の動画では、自己破産を申し立てる際に、親などの家族が自分のために預金口座を作ってお金を貯めていてくれたことが分かった場合、自己破産の手続にどのような影響があるか、という点についてお話したいと思います。

 

  ◆自己破産と預貯金等の関係 →2.

  ◆親が自分のためにつくった預貯金が見つかった場合 →3.

  ◆ご家族にご相談いただくこと →4.

 

2 自己破産と預貯金等の関係

⑴ 換価対象になる可能性

 自己破産を行うと、破産者が一定以上の財産を保有している場合は、これを現金に換えて債権者に配当する手続が行われます。

 

 この「換価されるかどうか」という換価基準は、各地の裁判所の運用によって異なってくるのですが、当事務所が在籍している福岡では、現金は99万円を超える金額、預貯金の場合は合計20万円を超える金額、保険の場合は解約返戻金見込額として20万円を超える金額の保険商品が、換価対象となります。

 

⑵ 管財事件になる可能性

 そして、換価対象となる財産が存在する場合、その破産手続は管財事件として振り分けられることになります。

 破産手続における同時廃止事件・管財事件の違いや、その振り分け基準については、こちらの動画・記事で紹介していますので、よろしければご参照ください。

⑶ 免責許可に関わる可能性

 また、破産手続がある程度進んだ後に、当初は申告していなかった自分名義の資産(預金、保険など)が見つかった場合、財産隠匿が疑われるなどして、免責手続(債務の支払義務を法律上免れるための手続)がスムーズに進まなくなる可能性があります。

3 親が自分のためにつくった預貯金等が見つかった場合

 上記の次第ですので、もし親御さんが自分名義の預金口座を作っていて、そこに◯円以上が積み立てられていた、あるいは自分名義で保険契約を結んで、保険料を支払ってくれていたといった場合、これをそのままにして破産すると、換価対象に組み入れられたり、管財事件になったり、スムーズに免責を受けられなくなったり等、様々な影響を受ける可能性があります。

 

 このとき、裁判所に対し、その財産はあくまで親御さんに帰属されるべきものだと主張し、理解してもらえたら、換価対象から外してもらえる可能性があります。

 裁判所は、財産の帰属先について「名義人ではなく出捐者が帰属先である」と考えています。そのため、こちらは以下の事情を基に、その財産の帰属先が自分ではなく親だと主張することになります。

 ・資産の運用(出入金)は誰が行っていたか

 ・入金の原資は何か

 ・自分(子)がその資産の名義人になった経緯

 ・通帳・キャッシュカード・届出印の保管状況

 

たとえば、親が自分(子)の将来の学費や結婚資金等のために自分名義で口座を作成し積み立てていた場合は、親の財産だと認められる可能性があるかと思います。

 

4 ご家族にご相談いただくということ

 以上のとおり、家族が自分名義の財産を積み立ててくれていた場合は、早めにそのことを把握し、家族に帰属されるべき財産であることを裁判所に理解してもらえるよう対策を講じなければなりません。

 そのため、自己破産を検討していて、かつ親御さんが自分のために貯金してくれている可能性があるような方は、できることなら自己破産を検討中であることをそのご家族に相談しておくことをお勧めいたします。

 その他にも、ご家族に伝えておくと、破産手続を進める上で、精神的にも経済的にも支えてもらえる可能性があります。可能であれば、1人で抱えるのではなく、ご家族に知っておいてもらうということを検討いただいても良いのかと思います。

 

 一方で、どうしても家族に知られないようにしたい、という方もいらっしゃいます。

 この場合、家族が連帯保証人になっている場合を除き、基本的には家族に知られないように配慮して手続を進めていく、ということも物理的には可能です。ただ、その場合は、上記2⑴〜⑶で想定し得るリスク等についてはお含みおきいただく必要があります。

 

著者紹介

昭和62年4月13日生
鹿児島県鹿児島市出身
福岡県弁護士会所属

経歴
兵庫県立神戸高等学校卒
九州大学法学部卒
九州大学法科大学院修了
趣味
音楽鑑賞・演奏,映画鑑賞,旅行,読書,囲碁