古い借金(債務)での預金差押-消滅時効援用と強制執行停止、請求異議訴訟

こんにちは弁護士の奥田です。

今日は「古い借金債務での預金差押」というテーマでお話をしたいと思います。サブタイトルとしては「消滅時効援用と強制執行停止、請求異議訴訟」ということでお話をします。

 

こういう事例です。

 

ある日銀行でお金を下ろそうと思ってATMに通帳を入れた。そうするとお金は下ろせずに通帳に「サシオサエ」と記帳されたものが戻ってきた。

しばらくすると裁判所から「債権差押命令」という書類が郵送されてきた。この債権差押命令というのをよく読んでみると、どうも10年以上前の判決で差押えをされている。

こういう事例です。

 

この場合、10年以上前の判決に表示された借金は、消滅時効にかかっている可能性があります。

 

ただ時効というのは、期間の経過10年というだけではなく、債務者側の「援用」という行為が必要です。援用して初めて消滅時効で借金債務が消えてなくなることになります。

 

ですので、10年経った債権、時効にかかってる債権での差押も別に違法なわけではありません。結構こういうケースはあります。もう10年以上経って時効になっている債権で以って金融業者が差押してくるというケースは結構あります。

 

その場合、債務者側として何もしなければそのまま預金残高を債権者が回収してしまう。「取立権」と言うんですけれども、債務者側が何もしなければこの差押を入れてきた金融業者(債権者)が銀行に連絡して、預金の残高はうちに払ってくれということを言ってくる。

 

この回収(取立権)というのは、債務者(お金を借りていた人間)に、上記の「債権差押命令」という裁判所からの書類が送達された日から一週間経つと可能になってくる。ですので、差押が入って、裁判所から債権差押命令というのが送られてきて一週間何もしなければ、金融業者(債権者)が銀行に連絡して預金残高はうちに払い戻してくれ、という形で取られる。回収されてからの時効援用ではもう手遅れということになります。後から時効援用ですよと言っても手遅れです、という話になるわけです。

 

①消滅時効の「援用」(だけ!)を行う。

 

ですので、債務者側としては消滅時効の援用を、まずこういう場合には行う。「だけ!」と書いてますけれども、それ以外のこうやって払いますとかそういう話は一切せずに、「時効の援用をします」と、そういう手紙(内容証明郵便がいいと思います)の送付、それだけをまずは行う。

 

もちろん10年以上前の判決でも、途中で時効の更新、昔でいうところの「時効の中断」などが発生してると時効になってない可能性もありますけれども、とりあえずは、まずダメ元で援用だけを行う。それ以外の、こうやって払いますとかそういう話は一切せずに時効の援用をまず行う。

 

 

②債権者と差押を取下げてもらうよう交渉

 

その次に、差押を入れてきた債権者(金融業者)と「これ時効だから取り下げてくれと」いうふうに、債権の差押を取り下げてくれということで交渉をするということです。それと同時に、一週間経ったら回収されてしまいますから、銀行にも連絡して、「今時効の関係でその債権者(金融業者)と話しをしているので、一週間経ったからといって払戻しをしないでもらえませんか」と交渉することもあります。

 

 

③強制執行停止申立(担保金必要)+請求異議訴訟

 

それから、法的には「強制執行停止申立」ということと、プラス「請求異議訴訟」という二つの裁判手続を行う。

「請求異議訴訟」というのはどういうことかというと、この判決に記載されている債権ではもう強制執行できませんよ、ということを裁判所に確認してもらう裁判なんですけれども、「強制執行停止申立」というのは、さっき言ったように、一週間経つともう金融業者(債権者)が回収してしまいますから、それを止める「仮処分」という手続、ということになります。この場合は担保金が必要ということになって、結構大掛かりな手続きにはなります。

 

ですので、こういう古い借金での差押が来たような場合には、一週間という時間制限もありますので、なるべく早くお近くの弁護士などの専門家に相談をされて対策を検討するということがいいのかなというふうに思います。

 

今日の話は以上です。

 

著者紹介

奥田貫介 弁護士

おくだ総合法律事務所 所長

司法修習50期 福岡県弁護士会所属

福岡県立修猷館高校卒

京都大学法学部卒