破産による資格制限と復権

Q.私は宅地建物取引士として仕事をしています。借金が増えてきたため、「自己破産」を考えていますが、今後も仕事を続けていくことはできるのでしょうか?

A.法律では、破産手続き開始にともない、破産者の資格や権利についての制限を設けている例があります。宅地建物取引士もその1つですので、この資格を前提とした仕事はできなくなります。もっとも、このような制限は永続的なものではなく、免責許可の決定が確定したなどにより「復権」すれば再び資格登録を行えますので、仕事を再開することが可能です。

 

1.破産手続きによる資格制限

  破産手続きの開始によって、破産者は、個別の法律に規定された資格の制限を受けます。以下では3つの類型に分けて、制限される資格を例示したいと思います。

 

(1)資力不足型

この類型は、①それぞれの業種・事業規模などに相応する最低基準以上の資力がなければ、事業体の存立そのものが危ういこと、また②それぞれの取引相手や社会に損害・混乱を及ぼすことも懸念されることを理由として、事業経営に関する資格が制限される、というものです。

たとえば、貸金業、質屋業、宅地建物取引業などがあります。

 

(2)人格不信型

この類型は、職務の遂行自体に特別な資力を要するものではありませんが、公正な職務遂行に懸念が抱かれることを理由として、資格が制限されるというものです。

たとえば、公正取引委員、国家公安委員・都道府県公安委員、司法修習生などがあります。

 

(3)複合型

この類型は、(1)(2)両者の観点から、他人の権利や財産の管理・処分に関与する資格が制限されるというものです。

たとえば、弁護士、公証人、公認会計士、宅地建物取引士などがあります。

 

2.復権について

  破産手続きは、個人破産者が経済的再出発を促す役割を果たすことを予定しています。そのための制度が免責および復権です。そのうち「復権」は、破産手続き開始に基づく資格制限などから破産者を解放し、破産者が社会的・経済的諸活動に従事することを可能にするものです。以下では、個人破産者が復権するための条件についてご紹介いたします。

 

(1)当然復権

「当然復権」とは、一定の要件が備われば、申立てや裁判を行わずに復権の効果が生じるものをいいます。たとえば、「免責許可決定」が確定すれば、破産者は法律上当然に復権することになります。これにより、多くの場合には、破産手続の開始から数か月程度で資格制限は解消されます。また、万が一、免責許可決定が出ないときにも、破産手続き開始後10年が経過した場合には「当然復権」されます。

 

(2)申立てによる復権

当然復権の事由に該当しない場合であっても、破産者が弁済などによって破産債権者に対する債務の全部についてその責任を免れた場合には、破産者の申立てに基づく裁判によって復権が与えられます。

 

3.おわりに

  破産法は、破産者に不要なペナルティーを科すものではなく、あくまで個人破産者の経済的再生の機会を確保することを予定としています。当事務所は、ご依頼者の方が1日でも早く「復権」を得られるよう「免責許可決定」に向けて努力して参りますので、安心してご相談ください。

 

免責についてはこちらをご参照ください

最終更新日:2018/08/09

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著者紹介

田代隼一郎 弁護士

おくだ総合法律事務所

真和高校卒
九州大学法学部卒
大阪大学大学院高等司法研究科修了
平成24年弁護士登録 福岡県弁護士会所属